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恋に落ちる時
第7章 丸の内の彼 -4-
わかってた、最初から本気じゃないよって釘刺されてたじゃない……一人で勝手に盛り上がって、気持ち伝える前でまだ良かったわ。
 
廊下を歩きながら、何度もそう自分の頭の中で繰り返して言い聞かせる。

だけど…だけど…――本当に何も知らなかった。

オーナーに結婚するって紹介するくらい大切な人が出来たなら流石に私とこんな事してちゃダメじゃん。

一気に色々な感情が湧き上がってきて胸が締め付けられるように苦しい。

すぐにでも、何で、どうしてとアキラさんに聞きに行きたかったけど、失恋で大事なミーティングに穴を空けられるわけないし、電話やラインで聞く勇気もなくて呆然としたまま席に戻った。

有り難い事に仕事を再開してしまえば忙しさで余計な事を考えなくてすむし、少し冷静さを取り戻して、自分が置かれている状況を客観的にみれるようになった。

てか、そもそも付き合ってる訳でもないのに、何を問い詰めようとしてたんだろ…昼間、感情的に動かないで良かった。ますます惨めになるとこだった。

―気持ちの整理なんてこれっぽっちも出来てない。
だけど、とにかく、もう終わりにしないと。
その日の仕事終わりに、彼の家に寄って私物を取って、鍵をポストに入れた事だけ短く連絡をいれた。

もうお店にも行けないな、閉店間際でもまだ賑わっている店内を横目に通り過ぎながら、遣る瀬無さを感じた。

家のリビングのソファにカバンを置くとドッと疲れがでて、着替えもせずにベットに寝転ぶ。

静かな部屋でぼーっと天井を眺めていると、堰を切ったように感情が溢れてきて、自分でもビックリするくらい次から次へと涙がこぼれた。

そうしていつの間にか泣き疲れて寝てしまっていた私は気付かなかった、テーブルの上でアキラさんからの着信を知らせる携帯電話のバイブ音に。
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