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乳母…めのと
第6章 乳母…6
隼人を寝かしつけながらあおいは寝入ってしまっていた。
佐野は寝入ってしまったあおいを起こさずに、そのまま自室で仕事を続けていた。
すると、夜中に川口から佐野に電話がかかってきた。

「あおいちゃんは?電話に出ないけどまだそこにいる?」

「あ、申し訳ない、隼人が熱を出して…寝かしつけてくれているんだ。」

「そうだったんだ。終電もなくなるし…」

「遅くなったから、泊まって貰おうかと思って。あ…何もしないから大丈夫。心配しなくてもいいから。」

「ははは。心配なんか…」

「なら、いい…か…」

「ああ、あおいちゃんを頼むな。」

「こちらこそ借りてしまって、申し訳ない。彼女なら隼人も安心するのか、落ち着いてくれて。」

「彼女は優しいから子供にも伝わるのかな?」

「怒る時も優しいしな。ははは。」

「あおいちゃんが怒った?彼女でも怒るんだ。全て受け入れてくれそうなのにな。」

「いや。俺が悪いんだ。子供を棄てようとしたからな。」

「そりやぁ、俺でも怒るわ。」

「そうだな。でもあおいさんにいて貰って感謝してる。彼女がいたからここまで生きてこれたんだ。大袈裟では無くて。」

「あおいさまさまだな。いっぱい彼女に報酬を出してやれよ。はははは。」

「ああ、そうするよ。」

二人は他愛の無い緩い話しをして電話を切った。

佐野は、隼人の部屋を覗くと、美しい寝顔をしたあおいと安心仕切って眠る我が子を見つめた。

いい女だ。
女としても母親としても人間としても素敵だ。

佐野はあおいの額にそっとキスをし、自室に戻った。


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