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この想い、あなたに届くまで~遊廓(くるわ)の恋~
第3章 第一話【天つみ空に】 其の参
「はい、ご新造さんのことで、旦那さまのお耳に入れておいた方が良いと思うことがございまして、こうしてご無礼も顧みずまかり越しました」
おみねという娘が反応を窺うような眼で、清五郎を見上げた。嫌な眼だ、小賢しいと、嫌悪がよぎるが、話がお逸のことだと言われると、邪険にはできない。まさか、店の奉公人の誰もから―幼い丁稚にまでうすのろだと馬鹿にされている愚鈍なはずの娘が、そこまで計算した上で清五郎に声をかけてきたとは、流石の清五郎も考えもしなかった。
おみねという娘が反応を窺うような眼で、清五郎を見上げた。嫌な眼だ、小賢しいと、嫌悪がよぎるが、話がお逸のことだと言われると、邪険にはできない。まさか、店の奉公人の誰もから―幼い丁稚にまでうすのろだと馬鹿にされている愚鈍なはずの娘が、そこまで計算した上で清五郎に声をかけてきたとは、流石の清五郎も考えもしなかった。