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この想い、あなたに届くまで~遊廓(くるわ)の恋~
第3章 第一話【天つみ空に】 其の参   
 一人になると哀しい気持ちが溢れてきて、眼に湧き上がった涙が零れそうになった。お逸は狼狽えて顔を上げ、それをこらえる。緩やかな夜風に髪を吹かれていると、心の中にまでその風が忍び込んできて、滲みるような気がする。
 霜月もそろそろ終わり近くになってきた。日中はまだまだ肌寒いというほどではないが、流石にこの時間になると冷える。
 お逸はそれでも障子戸を閉めようとせず、縁に座り、半渇きの髪に櫛を通した。父が買い与えてくれた蒔絵の櫛には白い兎と紅葉、桜の模様が描かれている。お逸のお気に入りの櫛だった。
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