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この想い、あなたに届くまで~遊廓(くるわ)の恋~
第3章 第一話【天つみ空に】 其の参
そんなお逸がたった一つだけ売らずに取っておいたのが、父の形見となってしまったこの櫛なのだ。もっとも、伊勢屋に来てからというもの、清五郎が父に代わり、様々な贅を凝らした品々を整えてくれたゆえ、すべてを処分したとしても一向に不自由はなかった。
清五郎は店に置いてある品の中でも殊に上等の布で、お逸の着物を仕立てさせ、簪、笄と美々しいものを取り揃えた。お逸にしてみれば、そんなにして貰うつもりも必要もないのに、清五郎は金に糸目はつけず、勝手にお逸の身の回りの品々を揃えてゆく。それに、清五郎の好みは万事につけ派手すぎて、お逸は正直好きにはなれなかった。
清五郎は店に置いてある品の中でも殊に上等の布で、お逸の着物を仕立てさせ、簪、笄と美々しいものを取り揃えた。お逸にしてみれば、そんなにして貰うつもりも必要もないのに、清五郎は金に糸目はつけず、勝手にお逸の身の回りの品々を揃えてゆく。それに、清五郎の好みは万事につけ派手すぎて、お逸は正直好きにはなれなかった。