この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
この想い、あなたに届くまで~遊廓(くるわ)の恋~
第3章 第一話【天つみ空に】 其の参
夜陰に紅葉がひそやかに浮かび上がっている。墨を溶き流したような夜空に、丸い月が白々と浮かんでいる。明るい月明かりのせいで、紅葉の鮮やかな朱の色がここからでも窺い見ることができる。もちろん昼間の光の下で見るのには叶わないが、こうして月光に照らし出された紅葉も良い。紅い衣を纏った艶麗な女人のようだ。
ふいに冷たい夜風が吹き込んできて、お逸は身を震わせた。それでも、戸を閉める気にはなれない。今となっては、紅葉をこうして眺めているときだけが、あの束の間の至福のひとときを偲ぶよすがであったからだ。
ふいに冷たい夜風が吹き込んできて、お逸は身を震わせた。それでも、戸を閉める気にはなれない。今となっては、紅葉をこうして眺めているときだけが、あの束の間の至福のひとときを偲ぶよすがであったからだ。