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この想い、あなたに届くまで~遊廓(くるわ)の恋~
第3章 第一話【天つみ空に】 其の参
―おとっつぁん、どうして、私を置いて一人で逝っちまったの?
お逸は父に問いかける。父さえ死ぬことがなければ、お逸はこんな卑劣な男の手に落ちることもなかったのに。
夢中で拳を振り回している中に、それが清五郎の顎に当たったらしい。ツと、呻いて清五郎がお逸からわずかに身を離した。
その一瞬をお逸は逃さなかった。渾身の力で清五郎の身体を押しのけると、狩人から逃れる兎のように素早く男から離れた。