この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
この想い、あなたに届くまで~遊廓(くるわ)の恋~
第3章 第一話【天つみ空に】 其の参
「こいつめ」
清五郎が口汚く罵り、お逸を血走った眼で追おうとする。お逸は素早く寝所の障子戸を開け放ち、庭に飛び降りた。素足であることも頓着せず、闇の中に走り込む。
「お逸、お逸ッ」
腹立たしげな呼び声がしばらく続いていた。お逸はその間、咄嗟に紛れ込んだ低木の茂みの中で息を潜めていた。低木が重なり合ったその場所は丁度隠れるには恰好であった。
呼び声はなおも続いていたが、やがて止んだ。舌打ちの音と共に、障子戸を荒々しく閉める音が続く。次いで、清五郎が番頭の喜助を呼ぶ声が癇性に響いた。
清五郎が口汚く罵り、お逸を血走った眼で追おうとする。お逸は素早く寝所の障子戸を開け放ち、庭に飛び降りた。素足であることも頓着せず、闇の中に走り込む。
「お逸、お逸ッ」
腹立たしげな呼び声がしばらく続いていた。お逸はその間、咄嗟に紛れ込んだ低木の茂みの中で息を潜めていた。低木が重なり合ったその場所は丁度隠れるには恰好であった。
呼び声はなおも続いていたが、やがて止んだ。舌打ちの音と共に、障子戸を荒々しく閉める音が続く。次いで、清五郎が番頭の喜助を呼ぶ声が癇性に響いた。