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この想い、あなたに届くまで~遊廓(くるわ)の恋~
第3章 第一話【天つみ空に】 其の参

一つ間違えば、旦那さまは別人のようにお変わりになられます。我々、傍にお仕えする者としては生きた心地もしません。始終、旦那さまの顔色ばかり窺っていなければなりませんから。以前、旦那さまの逆鱗に触れた丁稚が足蹴にされ、打ち所が悪くて、亡くなったことさえあるほどです」
「―」
お逸は、最早、何も言葉がなかった。真吉の話によれば、奉公に上がったばかりの幼い丁稚に読み書きを教えていたときのことだったという。通常、そのような商いのいろはを教え込むのは大番頭か番頭当たりの役割だが、伊勢屋では代々丁稚を仕込むのは当主自らと決まっているという。
「―」
お逸は、最早、何も言葉がなかった。真吉の話によれば、奉公に上がったばかりの幼い丁稚に読み書きを教えていたときのことだったという。通常、そのような商いのいろはを教え込むのは大番頭か番頭当たりの役割だが、伊勢屋では代々丁稚を仕込むのは当主自らと決まっているという。

