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この想い、あなたに届くまで~遊廓(くるわ)の恋~
第3章 第一話【天つみ空に】 其の参

慣例に倣い、清五郎も丁稚に読み書きから算盤までを教えていたのだが、その新入りは物憶えが悪く、何を教えても呑み込みが思わしくない。一つ憶えれば、今度は以前に憶えたことを忘れるといった案配で、いっかな手習いが進まない。ある日、業を煮やした清五郎がその丁稚を滅多蹴りにするという事件が起こった。
丁稚は蹴られた拍子に昏倒、その後頭部を机が直撃した。すぐに掛かり付けの医者が呼ばれたが、丁稚は即死に近い状態であった。大番頭の佐兵衛は事が世間に洩れるのを怖れ、丁稚の両親には多額の金を香典として届け、他言は無用と更に上乗せした口止め料を渡した。
丁稚は蹴られた拍子に昏倒、その後頭部を机が直撃した。すぐに掛かり付けの医者が呼ばれたが、丁稚は即死に近い状態であった。大番頭の佐兵衛は事が世間に洩れるのを怖れ、丁稚の両親には多額の金を香典として届け、他言は無用と更に上乗せした口止め料を渡した。

