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この想い、あなたに届くまで~遊廓(くるわ)の恋~
第3章 第一話【天つみ空に】 其の参

桶職人をしていた父親は、息子の亡骸を見て絶句し、母親は冷たくなった骸(むくろ)を抱きしめて号泣した。佐兵衛が二人に渡したのは、裏店暮らしの桶職人がゆうに二、三年は暮らせるだけの金であった。当時、亡くなった丁稚は八つになったばかりであったという。
「―信じられない」
お逸は嘆息した。お逸の父仁左衛門は確かに、商人としては失格だったのかもしれない。一応やり手とは云われていても、結局は手に負えぬほどの負債を抱えて、肥前屋の商売は事実上、たちゆかなくなっていたのだから。
「―信じられない」
お逸は嘆息した。お逸の父仁左衛門は確かに、商人としては失格だったのかもしれない。一応やり手とは云われていても、結局は手に負えぬほどの負債を抱えて、肥前屋の商売は事実上、たちゆかなくなっていたのだから。

