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この想い、あなたに届くまで~遊廓(くるわ)の恋~
第1章 第一話【天つみ空に】 其の壱
肥前屋の娘として暮らしていた頃は、自分の部屋の掃除や身の回りのことくらいは自分でしていたのだ。それが、ここに来てからというもの、何もすることがなく、すべてお付きの女中が世話を焼いてくれる。ありがたいのはむろんだが、あまりに構われすぎて、かえって気詰まりなほどであった。
伊勢屋に迎えられた翌日、清五郎とお逸の祝言がごく内輪で執り行われた。その場に連なったのは、証人としてお逸の叔父縹屋基次郎だけで、後は小さな金屏風を引き回した前に、新郎新婦が居並び、約束の杯事をしただけという、至って形式的、簡略なものだった。
伊勢屋に迎えられた翌日、清五郎とお逸の祝言がごく内輪で執り行われた。その場に連なったのは、証人としてお逸の叔父縹屋基次郎だけで、後は小さな金屏風を引き回した前に、新郎新婦が居並び、約束の杯事をしただけという、至って形式的、簡略なものだった。