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この想い、あなたに届くまで~遊廓(くるわ)の恋~
第5章 第二話【春の日】其の壱
時刻はそろそろ昼近くになろうとしていた。あまりに羽目を外しすぎて、一夜を過ごすどころか、流(いつ)連(づけ)までしてしまった男も流石にそろそろ帰らねばならないと思案し始めていた。婿養子の彼は所帯を持って十年になるが、いまだに気の強い女房に頭が上がらないのだ。結婚して十年、初めての吉原遊び、しかも流連である。夜が明けるまでは、それこそ女の柔肌に包まれ、夢のようなひとときを過ごしていたものの、障子の外が明るくなるにつれ、流石に現実を認識せねばならなくなってきた。