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この想い、あなたに届くまで~遊廓(くるわ)の恋~
第5章 第二話【春の日】其の壱
お逸はうなだれる。畳に端座して、両手を揃えて付いて頭を深々と下げた。ここを追い出されてしまったら、もう、どこにも行く当てはないのだ。何より、真吉と離れ離れにはなりたくない。
お逸は、江戸でも指折りの大店にして老舗の肥前屋の一人娘であった。しかし、去年の秋、父仁左衛門が商いに失敗、多額の負債を残したまま、突然亡くなってしまった。借金のかたに吉原に連れてこられるところ、父の友人であった伊勢屋清五郎がすべての負債を肩代わりした上に、お逸を引き取ってくれた。
お逸は、江戸でも指折りの大店にして老舗の肥前屋の一人娘であった。しかし、去年の秋、父仁左衛門が商いに失敗、多額の負債を残したまま、突然亡くなってしまった。借金のかたに吉原に連れてこられるところ、父の友人であった伊勢屋清五郎がすべての負債を肩代わりした上に、お逸を引き取ってくれた。