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この想い、あなたに届くまで~遊廓(くるわ)の恋~
第1章 第一話【天つみ空に】 其の壱
機転も利かず、喋るのもゆっくりとしているので、他の女中仲間からは馬鹿にされているおみねであったが、お逸は、おみねを誰よりも信頼できると思っている。
その日は琴の稽古の帰りであった。和泉橋町には実家にいた頃からずっと通っていた師匠の住まいがある。師匠は、さる武家のご後室で、お逸にとっては祖母に当たるほどの年齢の夫人であった。いつも品の良い紫の着物を着た、上品な老婦人である。一人息子がいるが、息子夫婦とは別に暮らしており、小さな屋敷に一人住まいであった。お逸は七歳のときから、ここに通っていた。
その日は琴の稽古の帰りであった。和泉橋町には実家にいた頃からずっと通っていた師匠の住まいがある。師匠は、さる武家のご後室で、お逸にとっては祖母に当たるほどの年齢の夫人であった。いつも品の良い紫の着物を着た、上品な老婦人である。一人息子がいるが、息子夫婦とは別に暮らしており、小さな屋敷に一人住まいであった。お逸は七歳のときから、ここに通っていた。