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この想い、あなたに届くまで~遊廓(くるわ)の恋~
第1章 第一話【天つみ空に】 其の壱
帰りはいつも、この和泉橋を通るのが道順であった。和泉橋は小さな川に掛かる橋で、上手に町人(ちようにん)町、下手に閑静な武家屋敷町がひろがる。この小さな橋一つを境に、賑やかな商人の町と武家屋敷ばかりが建ち並ぶ町が存在する。町人町はその名のとおり、商家が軒を連ねる町人の町、和泉橋町と呼ばれる武家屋敷町は老中松平越中守さまのお屋敷を初め、高禄の直参旗本の屋敷が集まっている。
お逸主従が和泉橋を渡りきったそのときである。武家屋敷町の方から続くひっそりとした小道を、二人連れの男がゆっくりと歩いてくるのがかいま見えた。二人とも侍ではあるようだが、どうにも高禄の武士とは見えず、身に纏う着物も粗末なものだ。年の頃は二十歳を幾つか出たくらいだろう。
お逸主従が和泉橋を渡りきったそのときである。武家屋敷町の方から続くひっそりとした小道を、二人連れの男がゆっくりと歩いてくるのがかいま見えた。二人とも侍ではあるようだが、どうにも高禄の武士とは見えず、身に纏う着物も粗末なものだ。年の頃は二十歳を幾つか出たくらいだろう。