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この想い、あなたに届くまで~遊廓(くるわ)の恋~
第5章 第二話【春の日】其の壱
それに―。もしかしたら、面白いことになるかもしれない。あの醜い娘が花乃屋随一の売れっ妓なんてことにでもなったら、それこそ誰もが仰天して腰を抜かすだろう。
「さて、これからどうなることやら」
おしがは呟きながら廊下を歩いていった。
おしがが出ていった後、楼主の部屋で一人になった甚佐は難しい表情で思案に耽っていた。甚佐には実子はいない。女房は吉原の生まれ育ちで、引手茶屋の娘だった。幼い頃から見知った仲で、相惚れとなり所帯を持ったが、その恋女房は十年も前に流行病でさっさと逝った。
「さて、これからどうなることやら」
おしがは呟きながら廊下を歩いていった。
おしがが出ていった後、楼主の部屋で一人になった甚佐は難しい表情で思案に耽っていた。甚佐には実子はいない。女房は吉原の生まれ育ちで、引手茶屋の娘だった。幼い頃から見知った仲で、相惚れとなり所帯を持ったが、その恋女房は十年も前に流行病でさっさと逝った。