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この想い、あなたに届くまで~遊廓(くるわ)の恋~
第5章 第二話【春の日】其の壱
女房を喪って以来、甚佐はますます見世の切り盛りに心血を注ぐようになった。子どものおらぬ分、甚佐はこの見世を我が子のように思っている節がある。父からゆずり受け、自分なりに力を尽くして守り抜いてきた見世だ。見世の利益になるためには、どこまででも冷酷になれると自分でも判っている。
それは、人を売り買いする〝亡八〟と呼ばれ、血も涙もないと半ば蔑まれ、この吉原(なか)で廓を切り盛りしながら生き抜いてきた男のしたたかさであった。
それは、人を売り買いする〝亡八〟と呼ばれ、血も涙もないと半ば蔑まれ、この吉原(なか)で廓を切り盛りしながら生き抜いてきた男のしたたかさであった。