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この想い、あなたに届くまで~遊廓(くるわ)の恋~
第5章 第二話【春の日】其の壱
花乃屋で下女奉公をするようになって、はや四月(よつき)が過ぎようとしている。お逸にとっては父の死、長年住み慣れた家や肥前屋というよりしろすべてのものを失った年が終わり、新年を迎えていた。幼い頃から父の良き理解であり友人であると心からの信頼を寄せていた伊勢屋清五郎、その清五郎が思いもかけぬ二重人格者であることも判った。表向きは静謐で思慮深い、やり手の商人、だが、裏の顔は冷酷非情どころか、カッとなれば常軌を逸した行動に出る人物だと知ってしまったのだ。