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この想い、あなたに届くまで~遊廓(くるわ)の恋~
第5章 第二話【春の日】其の壱
お逸にとっては、一度にあまりにも多くのことがありすぎた年が終わった。だが、年が変わっても、お逸の周辺には何の変化もない。
ただ毎日、判で押したような日々が流れているだけだ。早朝、まだ遊女たちが客と共に眠っている時間には起き出し、掃除洗濯、三度の飯の支度と時間に追われるように働きどおしだ。陽が落ちてもなお働いて、漸く女中部屋に帰れるのは深夜になってからである。
しかし、仕事の辛さは、お逸にとってはさほど問題ではない。確かに大店の一人娘として父親に溺愛されて育った身には、今の下女奉公はこたえる。
ただ毎日、判で押したような日々が流れているだけだ。早朝、まだ遊女たちが客と共に眠っている時間には起き出し、掃除洗濯、三度の飯の支度と時間に追われるように働きどおしだ。陽が落ちてもなお働いて、漸く女中部屋に帰れるのは深夜になってからである。
しかし、仕事の辛さは、お逸にとってはさほど問題ではない。確かに大店の一人娘として父親に溺愛されて育った身には、今の下女奉公はこたえる。