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この想い、あなたに届くまで~遊廓(くるわ)の恋~
第5章 第二話【春の日】其の壱
 お逸が下働きの女中となったのは、他ならぬこの見世の主人甚佐の鶴のひと声
―しようがねえな。この器量と歳では禿にもなれやしねえ。せいぜいが下働きってところだろう。
 によるものだという。むろん、お逸はこの科白を直接に聞いたわけではなく、やり手のおしがから聞かされた。要するに、救いようのない醜い娘だから、女郎として見世に出すわけにもゆかないし、仕方なく下女として使うかということだ。甚佐は真吉の用心棒としての腕を高く買っている。恐らくは真吉を手放したくないがために、一緒にいるお逸をも仕方なくお情けで置いているといったところだろう。
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