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この想い、あなたに届くまで~遊廓(くるわ)の恋~
第5章 第二話【春の日】其の壱
が、生来、働き者であり根が素直で呑み込みも早いお逸は、教えられたことはすぐに理解し、記憶する。他人のいやがる仕事でも進んで引き受けるゆえ、先輩である年上の女中たちから重宝がられ、可愛がられた。
荒れたことなどなかった手には、早くもヒビやあかぎれができていたが、その痛みも我慢はできる。お逸が心底辛いのは、真吉に思うように逢えぬことであった。
判ってはいる。たとえ逢えなくとも、こうしてすぐ近くにいられるだけでも幸せなのだ。これ以上の贅沢や我が儘を言えば、仏罰が当たるかもしれない。
荒れたことなどなかった手には、早くもヒビやあかぎれができていたが、その痛みも我慢はできる。お逸が心底辛いのは、真吉に思うように逢えぬことであった。
判ってはいる。たとえ逢えなくとも、こうしてすぐ近くにいられるだけでも幸せなのだ。これ以上の贅沢や我が儘を言えば、仏罰が当たるかもしれない。