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この想い、あなたに届くまで~遊廓(くるわ)の恋~
第5章 第二話【春の日】其の壱
だが、と、裏腹に、もう一人の自分がそっと囁きかける。果たして、それは本当なのかと。恋の歌に歌われているように烈しい恋に身を灼いているのは、もしかしたら、お逸の方だけなのかもしれない。真吉はなりゆきでお逸の手を取って逃げただけで、心の底ではこんな厄介事に巻き込まれたことを迷惑に思っているのではないだろうか。
違う、真吉は、そんなことを考えるような男ではない。そう思おうとしてみても、どこかで否定し切れないのもまた事実だ。何と言っても、お逸はまだ真吉から一度として〝惚れている〟とか〝好きだ〟と言われたことがないのだ。
違う、真吉は、そんなことを考えるような男ではない。そう思おうとしてみても、どこかで否定し切れないのもまた事実だ。何と言っても、お逸はまだ真吉から一度として〝惚れている〟とか〝好きだ〟と言われたことがないのだ。