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この想い、あなたに届くまで~遊廓(くるわ)の恋~
第6章 第二話【春の日】其の弐
「簪なんか買ってやれねえから、今のところはこれで我慢してくれ。その中、まとまった金が入ったら、何か買ってやる」
「真吉さん、私―」
お逸の眼から大粒の涙が溢れ、頬をつたう。今度は我慢しようとしても、涙は止まらなかった。
「どうした、こんなんじゃ、駄目か?」
真吉の声に狼狽が混じった。
「そりゃアそうだよな。お逸はこれまで何不自由ないお嬢さま育ちで―」
言いかけた真吉に、お逸は強い口調で言った。