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この想い、あなたに届くまで~遊廓(くるわ)の恋~
第7章 第二話【春の日】其の参
元々武家の出である松風は花乃屋に禿として入った時、既にある程度の字は書けた。その後も、手習いの師匠についてひととおりの知識を授けられ、殊に書道には造詣が深い。
掛け軸の前には、いかにも高価そうな青磁の壺に紅梅の枝が数本、無造作に活けられている。その可憐な花は、束の間、お逸に真吉の面影を思い出させた。真吉と廊下で儚い逢瀬を果たしてから、既に半月が経ってしまった。あれから二人きりで逢う機会はまだ巡ってこない。
掛け軸の前には、いかにも高価そうな青磁の壺に紅梅の枝が数本、無造作に活けられている。その可憐な花は、束の間、お逸に真吉の面影を思い出させた。真吉と廊下で儚い逢瀬を果たしてから、既に半月が経ってしまった。あれから二人きりで逢う機会はまだ巡ってこない。