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この想い、あなたに届くまで~遊廓(くるわ)の恋~
第7章 第二話【春の日】其の参
松風の毅然とした言葉には、いささかの迷いもない。お逸は、もう何も言うことはなかった。
自分で考えて選んだ道なのだ―。そう言い切ったときの松風の貌はこれまでにお逸が見た中でいっとう輝いて綺麗だった。
これぞ、まさに吉原が誇る太夫の心意気なのだと、傍で眺めるお逸までが誇らしくなった。
「松風太夫、どうか幾久しくお幸せでありますように」
お逸は松風から名残にと贈られた簪を握りしめ、深々と頭を下げた。