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この想い、あなたに届くまで~遊廓(くるわ)の恋~
第8章 第三話 【白妙菊の約束】其の壱

花乃屋に多治郎が姿を見せたのは、その年の弥生もそろそろ半ばを迎えようとしていた頃であった。この月の初め、花乃屋でお職を張っていた稼ぎ頭の花魁松風が落籍(ひか)されて出ていっている。
吉原の女ならば誰もが憧れる玉の輿―東両国の両替商三船屋新左衛門の妻として迎えられたのだ。松風は二十二歳、十八で花魁となって以来、花乃屋の稼ぎ頭であった。花乃屋の主人甚佐は、この秘蔵っ子の抜けた穴を一日も早く埋めるべく、やり手のおしがに新しい禿を入れるように指図している。
吉原の女ならば誰もが憧れる玉の輿―東両国の両替商三船屋新左衛門の妻として迎えられたのだ。松風は二十二歳、十八で花魁となって以来、花乃屋の稼ぎ頭であった。花乃屋の主人甚佐は、この秘蔵っ子の抜けた穴を一日も早く埋めるべく、やり手のおしがに新しい禿を入れるように指図している。

