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この想い、あなたに届くまで~遊廓(くるわ)の恋~
第2章 第一話【天つみ空に】 其の弐

父は穏やかな人柄ではあったが、なかなかいかつい顔つきの強面の男であった。一見したところ、商人というよりは地回りの親分といった風にも見えた。そんな父ではあったが、一人娘のお逸を前にすると、相好を崩した、親馬鹿な父親に変わった。
そんな父親が実は万葉集を愛好していたという逸話は、誰にも話したことはない。万葉集といえば、様々な歌があるが、父が殊に気に入っていたのは恋の歌であった。
「久方の天つみ空に照る月の 失せむ日にこそわが恋止まぬ」
お逸が呟くと、真吉が小首を傾げた。
そんな父親が実は万葉集を愛好していたという逸話は、誰にも話したことはない。万葉集といえば、様々な歌があるが、父が殊に気に入っていたのは恋の歌であった。
「久方の天つみ空に照る月の 失せむ日にこそわが恋止まぬ」
お逸が呟くと、真吉が小首を傾げた。

