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この想い、あなたに届くまで~遊廓(くるわ)の恋~
第11章 第四話【恋月夜】 其の壱
だが、いつも着ている夜着は取り上げられてしまったため、この緋縮緬の襦袢を着るしかない。お逸は沈んだ気持ちで、緋襦袢に袖を通した。春の陽が傾き、宵闇が吉原の町をひっそりと包み始めた頃、夜見世の始まりを告げるすすがきの音色が鳴り始める。
廓の軒先に点った灯りが華やかに夜を彩り、昼間の深閑とした静けさが嘘のように不夜城吉原が生き生きと輝き出す時間だ。その頃、おしががお逸の部屋にふっと顔を見せた。