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この想い、あなたに届くまで~遊廓(くるわ)の恋~
第1章 第一話【天つみ空に】 其の壱
自分は、あまりに迂闊で世間知らずすぎた。父に甘えてばかりで、父の身体のことも商売のことも少しも考えてみようとはしなかった。お逸は、そのことで我と我が身を責めた。
父の葬儀が終わった後も、優しかった父の笑顔ばかりが瞼に甦り、父の位牌のある仏間に一人こもって泣いてばかりいた。
そんなある日、父の弟に当たる縹屋(はなだや)の主人基次郎(もとじろう)が来て、お逸は遅かれ早かれここを出てゆかねばならぬことを言い渡された。基次郎は二十歳の砌、先代―つまり仁左衛門と基次郎の父から暖簾分けして貰い、今の店を持った。
父の葬儀が終わった後も、優しかった父の笑顔ばかりが瞼に甦り、父の位牌のある仏間に一人こもって泣いてばかりいた。
そんなある日、父の弟に当たる縹屋(はなだや)の主人基次郎(もとじろう)が来て、お逸は遅かれ早かれここを出てゆかねばならぬことを言い渡された。基次郎は二十歳の砌、先代―つまり仁左衛門と基次郎の父から暖簾分けして貰い、今の店を持った。