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この想い、あなたに届くまで~遊廓(くるわ)の恋~
第1章 第一話【天つみ空に】 其の壱
基次郎は父のたった一人の弟であったが、どういうものか、父とこの弟は昔から仲が良くなかった。その昔、若かりし頃、父と叔父が一人の女を巡って対立したことがある―と、口さがない者たちはいう。
その女というのが、お逸の母お駒であった。噂の真偽は定かではないけれど、叔父が肥前屋に来ることなぞ、ついぞない。それが突如として現れ、かすかな優越感すら滲ませながら、お逸にここから立ち退くようにと告げたのだ。基次郎は言った。仁左衛門の借金はあまりにも多額のため、到底、弟の自分一人で支払い切れるものではないこと、また、このままでは、お逸は借金のかたとして、遊廓に身を沈めねばならないことなどを素っ気ない口調で話した。
その女というのが、お逸の母お駒であった。噂の真偽は定かではないけれど、叔父が肥前屋に来ることなぞ、ついぞない。それが突如として現れ、かすかな優越感すら滲ませながら、お逸にここから立ち退くようにと告げたのだ。基次郎は言った。仁左衛門の借金はあまりにも多額のため、到底、弟の自分一人で支払い切れるものではないこと、また、このままでは、お逸は借金のかたとして、遊廓に身を沈めねばならないことなどを素っ気ない口調で話した。