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この想い、あなたに届くまで~遊廓(くるわ)の恋~
第12章 第四話【恋月夜】 其の弐
「―ありがとうございます」
お逸は茶色い干からびた小さな実を押し頂くようにして受け取る。
そのカサカサとした実から、温かなものが流れ込んできて、それがお逸の傷ついた身体と心を癒やしていってくれるようだ。
お逸の眼から新たな涙がこぼれ落ちる。
だが、これは哀しみのためではない、嬉しさから込み上げてきたものだ。
これまで情らしい情を示したこともないやり手から受け取った、初めての優しさだった。