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便利屋
第1章 トモの場合
「ねえ、そういえばあそこの壊れている棚いつになったら修理してくれるの?」
「あっごめん忘れてた。今週は付き合いでゴルフだから、また来週でもできたらするよ。」
「いつもそう言って、やってくれないよね。壊れてから2ヶ月位たつよ。
いい加減にやってよ。」
「わかった、やるから。じゃあ行ってくる。おい、優吾準備できたか?行くぞ。」
「うん、父さん。お母さん、行ってきます。」
「いってらっしゃい。」
「はあ・・・」
こうしてため息からいつもの私の毎日が始まる。
洗濯して、掃除して、買い物して、帰って来た子供を塾に送って、晩御飯を作って、・・・・・あとは寝る。
順番が変わる事はあるけどそれの繰り返し。
亭主、子供、私それぞれやらなければいけない事がある。
絵に書いた様な笑顔あふれる家庭がある訳も無く、みんな自分の事で精一杯だ。
(歯車でしかないのか。)
そんなに思う事がある。
けど、その事は考えるようにはしないようにしている。


「もういい。あの棚は業者に頼んでやってもらおーっと。あの人やってくれる気無さそうだし。」
私はスマホで近くの業者を探す。
(大工さんは丁寧だけど高くつきそうななイメージだよね。仕上がりがしっかりさえしていれば、気軽に頼めそうな業者がいいよね。)
そんな事を考えながら私はスマホのページを探して行く。

『身の回りから、貴方自身の事まで何でも致します。何でもご相談ください。安心、丁寧、親切がモットーです。』

(貴方自身って何?)
と思いつつ、クリックする。
そこには社長らしき人の上半身の写真が載っている。
名前は高木奏輔。
見た目は35歳位、スッキリした顔、Tシャツでも分かる厚い胸板、逞しい腕。
趣味と特技の欄にはサーフィンなど体を動かす事全般、仲間に好評のマッサージと書いてある。
他の部分を読んでいく。
どうやら一人でやっているらしい。
実際の仕事の写真もあるが、庭の草刈りから部屋の掃除、ある程度の大工仕事など、しっかりとしている印象だ。
しかもこの街もサービス対応範囲だ。
一番下までいくと
『どんな相談も対応致します。相談は無料です。秘密は厳守致します。お気軽にお電話下さい。TEL**********』
と書いてある。
何か怪しくなりスマホを閉じて洗濯を始めた。




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