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有翼神は翼無き女性を愛する~異世界の溺愛恋模様
第1章 プロローグ
「……あぁ、これで」
手に持つのは、赤ワインが入ったワイングラス。その中に1つ、また1つと、白い薬のような物を入れてゆく。
私の名前は水神永美(みずかみ えいみ)。
普通の社会人で、普通に事務職をこなす毎日。だけどそれは口さがない噂に全てを壊されてしまったのよ。
私が会社の社長の愛人? 初めはなにそれって思ったよ。愛人云々より私は男性と付き合ったことすら無いのに、どうしてそんな噂が立ったのだろう。
それが社長と本当の愛人が私に仕掛けた罠とは気づかず、私は周りから陰口を叩かれ、仕事もままならないくらいには冷遇されたと思う。
そんな会社でも耐えていたのに、上司から言われたのは自主的退職。どうして? 私はなにもしていないのに、みんなで私を追い込むの。
会社に居られなくなった私は退職を受け入れ、仕事とプライドを一気に失ってしまった。
新しい仕事を探しても、元居た会社から横槍が入り中々再就職すら出来ない日々。なにかがおかしいと分かっていても、私なんかでは事実を解明出来る力なんてない。
ドンドンと追い詰められていく私、そのうち住んでいるこの場所まで無くしてしまいそう、そう思った私がやったことが……これ。
「これが最後の1つ」
睡眠薬を手で転がした後、ワイングラスにポチャンと入れる。その数は2シートだから20個の睡眠薬が、このワインの中に入っている。
シュワシュワとワインに溶ける睡眠薬たちを虚ろに眺めた後、私はそのワインを口に含む。ワインの味と苦い薬の味が混じった、私を楽にしてくれるもの。
そう私はこれを飲み干し、眠るように逝きたいの。飲めば飲むほど意識は朦朧となり、全て飲みきる頃には手からワイングラスが転げ落ちて、私はリビングのフワフワしているラグにその身を預け来るべき時に備えた。
なにも考えずただ眠ってしまえばいい、そうすれば私は全てのしがらみから解放されて楽になれるのだから。