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森の中
第4章 4 目的
 あっという間に一週間が経ち、約束の金曜日がやってきた。昼過ぎに女はこの山小屋へやってくる。
 そろそろかと冬樹が思っているとコンコンと軽いノックの音が聞こえた。ドアを開けてやる。
 女が小さな声で「こんにちは」といい少しそわそわしながら周囲を気にしている。

「どうかしたか」
「あ、あの。駐車場にほかに車が停まっていたので誰かお客様かと……」
「いや。誰も来てないけどどんな車?」
「黒の……なんだっけ最近よく見かけるSUV車です」
「ああ。川上君だな」

 冬樹は含み笑いをして女を見る。(見せてやるか……)

「今日はそんなに寒くないな。ちょっと散歩しよう」
「え、あ、はい」

 すぐに情事が始まるとでも思っていたのだろう。女は意外だというような顔つきをしたが同時に安堵の表情も見せた。

 小屋から外に出ると少し伐採した空から幾筋も光が差し明るく森の中を照らしている。ゆるい傾斜を登り来週伐採する予定の場所へ女を連れて歩いた。

「平気?」
「ええ。山歩きは結構してるので」
「へえ」

 確かに女は呼吸を乱すことなくついてくる。しかしその呼吸もすぐ乱すことになるだろうが……。

 冬樹は足を止め、女にも停まるように言い、静かにしろと唇に人差し指を当てた。
女は不思議そうな顔をしてこっちも見るが、断片的に聴こえてくる音にはっとする。
そっと女の肩を抱き寄せ大木の陰に身を寄せながら冬樹は十メートルほど先の大木を指さした。

「っ……」

 女の口をそっと押さえる。
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