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森の中
第9章 9 決別
薪ストーブの前に座らせ、コーヒーを淹れ、マグカップを瑠美の手に持たせた。
放心したような瑠美はか細く
「ありがとうございます」
と言ったままカップを両手で持ちストーブの中の炎を眺めている。
冬樹も隣に座り、一緒にストーブの火に当たった。飲まないコーヒーを手から取り上げテーブルに置き、そして肩を抱いた。
「あたたかい」
瑠美は一言言いぽつりぽつりと話し始めた。
「先月の半ばに具合が悪くなってしまって。先週逝きました。痛かっただろうに安らかな顔で最後に『聡志さん、お待たせ』って」
「そうか」
もう流す涙はないのだろう。静かに話す瑠美は抜け殻のように見えた。
「もうここには来ないつもりだったんですが、母の荷物を整頓していたらあなた宛てに手紙が出てきたんです。迷惑かもしれないけどよかったら読んでやってください」
コートのポケットから白い封筒をだし、冬樹に差し出した。
冬樹は受け取って封を開け、弱々しいが柔らかい書体のきれいな字を目で追った。
放心したような瑠美はか細く
「ありがとうございます」
と言ったままカップを両手で持ちストーブの中の炎を眺めている。
冬樹も隣に座り、一緒にストーブの火に当たった。飲まないコーヒーを手から取り上げテーブルに置き、そして肩を抱いた。
「あたたかい」
瑠美は一言言いぽつりぽつりと話し始めた。
「先月の半ばに具合が悪くなってしまって。先週逝きました。痛かっただろうに安らかな顔で最後に『聡志さん、お待たせ』って」
「そうか」
もう流す涙はないのだろう。静かに話す瑠美は抜け殻のように見えた。
「もうここには来ないつもりだったんですが、母の荷物を整頓していたらあなた宛てに手紙が出てきたんです。迷惑かもしれないけどよかったら読んでやってください」
コートのポケットから白い封筒をだし、冬樹に差し出した。
冬樹は受け取って封を開け、弱々しいが柔らかい書体のきれいな字を目で追った。