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24個の小さな扉
第1章 24個の小さな扉
「ごめんっ!ほんっとーに、ごめん!!彼女をイブに一人にするなんて、俺、彼氏失格っ……」
「ちょっと、大げさじゃない?光が仕事なら、ヒメとご飯でも」
「違う……」
「え?」
「仕事なの、俺だけ……」
話をよくよく聞くと、その日はヒカリさんだけのお仕事みたいで。
ということは、朔さんは、仕事じゃない。つまり、ヒメは、一人じゃない。
「別に良いよ。よくある事だし」
「でもっ……でもっ付き合って初め」
「気にしないで」
付き合って初めてのクリスマス。
……って、言われる前に蓋をする。
「私も、気にしてないから。これ使いたいから、お風呂入ってくるね」
「るりっ……!」
光がめそめそしてるのをきっぱり無視して、今日の窓から出て来た小さい瓶を持って居間を出た。
中身は、パステルグリーンのペースト。フェイスポリッシャーだ。蓋を開けると、ミントの香りがした……冬なのにっ。
「……ばかっ……」
体を洗ってフェイスポリッシャーを試して湯船の中に浸かったら、ミントのせいで、涙が出て来た。