
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
24個の小さな扉
第1章 24個の小さな扉

*
「ただいまー……」
その日の、夜遅く。
照明を落とした居間のソファでうとうとしてたら、途中からはーっという溜め息に変わる「ただいま」と一緒に、扉が開いた。
「おかえり……」
「るりちゃんっ!?」
重たいバッグが、床に落ちた音。
光があわあわしながらソファの前に滑り込みみたいに座った。
「もう三時なのに、まだ寝てなかったの?!」
「……ここで、ねてたよ……?」
なかなかはっきり目が覚めない。
内緒話みたいな声で話してるのに、光の声ははっきり通る。
……さすがヒカリさんだなあ。
「ちょ!そんなのダメでしょ?!明日に差し支えちゃうじゃん!!」
びっくりしてるくらいなら分かるけど、泣きそうにまでならなくっても。
「……これ、今日の」
「あ」
笑いそうになるのをこらえながら、ピンクの袋を光の目の前にかざした。
「ごめんね?いいよって言われたから、開けちゃった。でも、バスソルトだったから……使わないで待ってたの」
「るりっ……」
ソファを抱き壊すつもりなの?!って思うくらい、むぎゅーっと抱き締められる。ソファは潰れそうだけど、私は潰れそうにならないのがおかしくて、笑っちゃう。
「バスソルト、一緒に使っても良いの?」
「うん。そしたら、ヒカリさんもなんか良い匂いがするって言われちゃうね……」
私達は小さな仲違いの仲直りをして、その日はベッドに運んで貰って眠って、イブの前の日に、バスソルトを使った。
その日の取材でいい匂いに気付いた女性ライターさんが、そこのコスメがヒカリさんのお気に入りだって、ぼかしてだけど記事にしっかり書いちゃって。
次の年のアドベントカレンダーが「ヒカリさんに」って、メーカーさんから橋本さんのところに送られて来るのは、この次の秋の終わりのお話だ。
【終】

