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戦場に響く鈴の音
第6章 覚悟
「この…、糞ガキ…。」
苛立ちをモロに出す俺を
「まあまあまあ…。」
と直愛が宥める。
夕方前には軍勢に追い付いた。
兵が俺の為に道を開ける。
軍の中央に直愛の馬が見える。
その馬に自分の馬を寄せれば大将代理として軍を率いていた直愛が
「お帰りなさいませ…。」
と言い俺に大将の座を明け渡す。
鈴は直愛の馬の前に座ってる。
相変わらず背には邪魔な厠を背負い凛とした綺麗な顔は真っ直ぐに前だけを見てる。
「鈴、厠のせいで直愛の馬がフラフラしてるぞ。」
照れ臭くて、そう鈴に声を掛けた俺に鈴が取った態度はプイと横を向いて俺の存在をガン無視する。
「それが帰って来た主に対する態度か!?」
馬の上で俺は鈴に喚き散らす。
どれだけ喚こうと鈴はいつものように無表情なまま俺の言葉を器用に右から左へ受け流す。
そしてキレた俺を宥めるのは直愛だ。
そうこうするうちに軍は夜営の体制に入る。
俺の天幕が張られても鈴は戻って来ない。
雪南が留守だからか直愛が俺の天幕にやって来る。
「鈴は?」
「鈴殿なら…、私の天幕に…。」
申し訳なさげに直愛が言う。
「何なんだ?あいつは?」
「寂しかっただけですよ。昨夜は幾ら私が説得をしても部屋の隅に座り込み、神路殿のお帰りを待っておりましたから…。」
「だったら…。」
少しくらい嬉しそうな顔をしろよ。
恥ずかしくて言えぬ言葉を飲み込む。
「鈴殿は神路殿が居なければ食事も取らないから、正直に言うなら私も困ってるのです。」
直愛が肩を竦める。
義父も鈴を無理に留守番をさせれば食事をしない可能性を言っていた。
全てが俺のせいだと鈴に責められてる気がするから、ますます凹んで来る。