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親愛なるご主人さま
第21章 宴のあと

 「あっ、奥様!」

 「ダメよ!どこへ行くの?」

 玲子は菜穂子を制し、抱きかかえるように両手で拘束した。

 「お仕置きされたいの菜穂子?薫は買われたの!見てたでしょ。お別れよ!」

 「ぅう・・・・」

 「オマエはここでご主人様が来るの待つのでしょ!」

 「・・・・・・はい・・」

 「お部屋に戻りましょう」

 玲子は菜穂子の頭を抱えるようにして自分の胸に顔を埋めさせ、菜穂子と薫の視線を絶った。菜穂子の背丈はヒールを履いた玲子の胸ぐらいの高さだ。

 玲子は菜穂子を包み隠すように抱く自分の背に右京の視線を感じ、背筋が怖気だった。このあと右京がどんな行動に出るか、予測しかねた。

 それと、“X”がこの場にしゃしゃり出ないのも不気味で怖かった。

 玲子は菜穂子を探し回っている間に、“X”が細井や右京のボディガードの男と一緒に上階のロビーに上がって行ったことを偶然にも知らなかった。

 そして意外にも右京は無言で、この場で玲子に絡んでこなかった。

 「さぁ、」

 小声で薫に声を掛け、上階への階段に向かった。

 「道を開けぃ!」

 高飛車に言い、見てる客達を退けさせ、薫を見せびらかすように引き歩いた。

 薫はしばらく這って引かれ、再び後ろを振り返った。

 玲子に慰められるように抱かれ、会場から別の部屋に向かう菜穂子が見えた。

 「さようなら・・菜穂子さま・・」

 小さく声を発した。


 ピシッ!


 右京の竹鞭が四つ這いの尻に振り下ろされた。




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