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第24章 野獣 対 女豹

　
　玲子は“Xはもう拳銃は撃てないと思って、わずかに油断があった。タガーナイフが顔をかすめ長い髪がハラリと散った。危うく肝を冷やしたが、切られたのは自慢の黒髪10センチ程の束だけで一瞬早く身をかわして助かった。

　「おのれっ！私の髪を・・・」

　玲子は身を翻して宙返りし、テーブルの上に飛び上がった。

　“X”が手負いのゴリラなら玲子は獲物を狩るサバンナの女豹のようだった。

　玲子は“X”との距離をとって身構え、重く長い一本鞭を大きく振りかぶってから一閃した。

　ビッチィーン!!!

「ぐぅがぁああ！」

　“X“の左手を強烈に叩き、握っていたタガーナイフが吹っ飛んだ。

　玲子は返し撃つようにもう一振りした。

　バチッーーン!!!

「んがぁあぁぁぁ・・・っ」

　鞭はズボンを脱いだ“X”の右足の太腿を捉え、血が噴き出た。

　“X”の動きが止まった。激痛に顔を歪ませている。

　玲子は不敵な笑みを浮かべ、テーブルから飛び降りて獲物との距離を詰めた。今度は少し力をセーブして狙いを定め、手首のスナップを効かせて鞭を横払いした。

　ヒュン！

　全長３メートルある鞭先の1メートルぐらいが撓って棒立ちになっている“X”の首にグルグルグルっと巻き付いた。玲子が鞭を引くと鞭が首に巻きついたまま絡んで留まった。

　「グォエッ！・・」

　玲子は鞭のグリップを握りしめ、苦しむ“X”を引きづって広間の中央ステージに上がった。昨夜の奴隷オークションの舞台になったところだ。

　昨夜使ったまま、天井からフックが付いた太い鎖が下がっている。


　オークション出品奴隷をお立ち台に上げて客に見せるときに縄で括って吊り下げた鎖だ。

　玲子は握っている長い一本鞭のグリップ部分を垂れさがる鎖のフックに掛けて結んだ。

　「ぐぅ・・・ぅぅ」

　“X”は首に巻き付いた鰐皮の鞭先を手で解こうとするが、折れて曲がった右腕は上がらず、左腕も極太の一本鞭に打たた衝撃で痺れて動かなかった。