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親愛なるご主人さま
第25章 川辺の雪

「『ご対面』は全て空振りだったと、県警から連絡が入った」
「うーん、そうでしたかぁ」
二人は少し落胆した。
「そこで、お二人さんにやってほしいことがある。今回は県内の失踪、行方不明者から洗ってみて、全て外れだったけど、県警の刑事部としては県外からあの女がやって来たとも考えられると言っている。で、ヤマさんは警視庁の情報管理室に行って全国の行方不明未解決のファイルからあの全裸死体の女と照合してくれ」
「くわぁー、全国ぅ!めちゃくちゃ手間かかる作業やー」
「いや、そうでもない。警視庁のあそこにはコンピューターでデータベースができているんだ。検索のスピードはこんな田舎の署で書類めくっているより数万倍速い」
「ワシはコンピュータなんてよう解らんぞ。署長」
「心配すな、ヤマさん。むこうの技術者がサポートしてくれる。それと、このまま『殺し』の線で捜査が進むとなれば、全国捜査規模にもなりかねん。警視庁の捜査1課にも寄って打合せしておいても早すぎはしない。ヤマさんは本庁の捜査1課長と旧知の仲だろ?確か」
「ええ、まあ・・」
「早速、今夜の列車で東京に向かってくれ」
「了解しました」
「俺はなぁ、この事件なーんか奥があって、いやーな予感がするんだ」
「・・・・・その予感・・・ワシも一緒ですわ」
「あのぉ、僕は留守番ですかぁ?」
「おぅ、矢島君。お前にも今日直ぐに行ってほしいところがあるんだ。県警本部では司法解剖を鑑定嘱託医師に頼むことになった。科捜研の出先の病院の法医学者だ。その医者から最終的な報告書が県警に上がってこっちの署に回ってくるまで時間がかかる。そこで、君はその医者が解剖を始める前に会って、昨日のあの現場の様子とか些細なことでもよ~く伝えて、その医者の感想や見解など報告書が出る前に聞き出しておいてくれ、あとできっと役に立つ」
「はぁ、わかりました。で、どこの病院ですか?署長」
「ここだ!」
署長は矢島に法医学研究の施設名と地図を渡した。
「先生のお名前は北条レイラだ」
「げっぇぇ!!」

