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親愛なるご主人さま
第29章 失踪、消失


 「あぁ、あのね先生・・・」



 ペースを狂わされている小田村。だが動き出したレイラの口は止まらない。

 彼女が髪を揺らし声を発する度に妙なオーラとでも言うか、香しい妖艶な空気が殺風景な取調室を漂うように染めて満ちていった。


 「どうなさったの刑事さん? ニヤニヤ、ハアハア息をして?盗んだ容疑者の話ぃ?なんだぁ、そっち聞きたいの?あの施設には変態さんが沢山いるから絞りきれないわ~、そうねぇ、えーと、辞めたセンター長と守衛のジジイが一番怪しいわ、いつも私のヒップをじーっと見ていたわ」


 「もうやめろ!痴女め!そっちの件は防犯課と話をしろ!」
 
 小田村は自分の頭を横に激しく振り、邪念を祓うようにレイラに言った。


 「あらヒドイ!痴女ですって? ちょっとセクハラじゃない?その言い方。だってぇ、聞きたいのでしょ?私のお話・・・」

 「遺体についてだ! あ、そう言えば、確か保存用のドライアイスは残っていて遺体だけが無くなっていたとか・・・鑑識課員に聞いたぞ、それについては、どうなんだ?」

 「ええ、遺体保冷用のドライアイスは残っていて・・美穂ちゃんだけが消えて・・あっ失礼、美穂じゃなくて菜穂さんでしたっけ?あの子・・・そうだぁ、わかったぁ、きっと生き返ってぇ、自分で歩いてどこかに行っちゃったのねぇ。私のワンピや白衣を着て・・・」





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