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親愛なるご主人さま
第4章 菜穂子の手紙3

 
 この地下のお部屋は、天井から床まで太い鉄格子で仕切られたお仕置きのための部屋です。裸電球がひとつ灯っているだけで、暗くて周りが良く見えません。薄暗い電球の光が鉄格子や出入り口の鉄の扉に不気味に反射しています。

 薫様は、この部屋の壁に打ち込まれたX字型の磔台に革ベルトで拘束され、両手両足を文字通りX字型に固定されて立たされておりました。身に着けているのは赤い首輪だけで、菜穂子の首輪と同じように番号札が付けられておりました。薫様は「009」番でした。
 目が暗さに慣れてくると、徐々に周囲が見えてきました。天井から無数の鎖や滑車が下がり、岩肌の壁のフックには太い鞭や縄が掛けらて下がっています。棚板の上には何本ものグロテスクなディルドやバイブ、蝋燭や浣腸器、液体が入ったボトルまでところ狭く置かれていました。
 
 さらに部屋の片隅を見ると簡易便器の白いオマルが置かれたままになっており、鉄格子の向こう側には重厚で豪華な革張りのソファが数点置かれ、VIP観客席のように配置されておりました。しかし今、その席にK様と玲子奥様のお姿はなく、不気味な佇まいの地下の鉄格子の中に薫様と菜穂子の二人きりでした。

 「ぁあ菜穂子様・・・・、お許しください。私のせいで・・・今日初めてお会いした菜穂子様まで・・・この部屋へ閉じ込められるなんて・・・」

 「そんな、お許しくださいだなんて・・・・・それに・・私のコト、“様”なんて付けないで“菜穂子”と呼び捨ててくださいませ。K様もそうおっしゃっていたわ。『ここでは薫は先輩』だからって」

 「呼び捨てだなんて・・・できないわ・・・」

 「呼び捨てで呼ばれたいのです。それにしても磔(はりつけ)にされて、ずっと放置なんて薫様がお可哀想・・・」

 「K様の目を盗んで菜穂子様を犯そうとした罪ですわ」

 薫様は自嘲気味にそうおっしゃると、美しい瞳を潤ませて菜穂子のことを見ながら妙に腰を振り始めました。無意識に腰をくねらすように動いてしまっているようです。



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