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泥だらけのお姫様
第5章 踏み入れた世界
卒業式。優希の卒業の姿よりも私は周りのお母さん達に目がいった。
……みんなキレイ。幸せそう。どうして私は……。
「優希くん、第2ボタン下さい」
「優希くん、県外の中学にいっちゃうんだよね? 寂しくなるね」
顔は夫に似てイケメンで、でも中身は優しい息子は女の子にモテモテだった。
最初は県内の公立に行くと言っていた息子。だけど、私に似ず頭が良く、スポーツ万能で、本当は他にしたいことがあるのではないか? 私の何度もの質問の結果、やりたいことがあるから行きたいところがあると本音を話してくれた。なるべく迷惑をかけないようにある程度は自力で大学まで通いたいという息子。このしっかりとした考えは、どこからなのだろう?
私にも優祐にも似つかない。いや、優祐を壊したのは私。だから、優祐の元々の性格を引き継いだのかもしれない。
息子がしっかりしてくれていると助かる。今の私は、この生活にしがみつくのに精一杯。寂しくなるけれど、少しだけ肩の荷がおりるようなそんな気がした。
心配じゃないわけじゃない。けれど、私の心は、この生活に悲鳴をあげていた。