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降りしきる黄金の雫は
第1章 1 植木
大家さんは薄くなったおでこをペシペシと叩きながら唸り続ける。もう関わって数年になるが、彼はせっかちな性格でなんでも先回りしたがるため、このままでは金木犀の存在が危ういかもしれない。
「渡辺さん、よかったら僕がこの木を引き取りましょうか。庭先に植えて管理しますよ」
「おっ、そうかい? 樹木医の君なら安心だし、うちの庭でもあるから知人に面目もたつなっ」
ぱっと顔を輝かせて掌でポンとこぶしを叩くと、そそくさとスコップとバケツを持ってきた。
「えっ、今掘り返すんですか?」
「ダメかね? 先週植えたばかりだから、早く掘った方が楽だろう」
「それは、まあ……そうですね」
可愛そうにこの金木犀は休む間もなく移動させられているようで、これじゃあ花をつける暇もないなと僕は同情した。せっかちだが快活な渡辺さんは、勢いよく土にスコップを差し込みあっという間に掘り返す。そしてビニールに根っこをくるんで気持ちよさそうに額の汗をぬぐった。
「じゃ、頼むよ」
「は、はあ。じゃあ僕はこれで」
両手に鞄と金木犀を抱え、100メートルほど先の自宅へ帰ることにした。
「渡辺さん、よかったら僕がこの木を引き取りましょうか。庭先に植えて管理しますよ」
「おっ、そうかい? 樹木医の君なら安心だし、うちの庭でもあるから知人に面目もたつなっ」
ぱっと顔を輝かせて掌でポンとこぶしを叩くと、そそくさとスコップとバケツを持ってきた。
「えっ、今掘り返すんですか?」
「ダメかね? 先週植えたばかりだから、早く掘った方が楽だろう」
「それは、まあ……そうですね」
可愛そうにこの金木犀は休む間もなく移動させられているようで、これじゃあ花をつける暇もないなと僕は同情した。せっかちだが快活な渡辺さんは、勢いよく土にスコップを差し込みあっという間に掘り返す。そしてビニールに根っこをくるんで気持ちよさそうに額の汗をぬぐった。
「じゃ、頼むよ」
「は、はあ。じゃあ僕はこれで」
両手に鞄と金木犀を抱え、100メートルほど先の自宅へ帰ることにした。