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降りしきる黄金の雫は
第14章 14 検査
岡田先輩が青ざめた表情と力の入らない足で僕の隣を歩く。
「先輩――こういうのは変ですけど、元気出してください」
「芳樹……」
癌だと言われても僕にはピンと来なかったし、逆に納得もできてしまう。――命には限りがある。
先輩が涙目で僕を両肩を持ち、時々嗚咽しながら『延命』やら『食事療法』『レーザー』などの言葉を投げかけてきたが頭に入ってこなかった。それよりも打ちのめされたような先輩の姿を見ることが悲しかった。
暗闇で静かに桂さんを待つ。
甘い香りが流れふわりと彼が隣りに座った。
「待ったのか」
「いえ」
しばらく彼の香りを嗅ぎ深呼吸しリラックスする。
「桂さん。僕――もう長くは生きられません。余命は数か月くらいって」
「もっと生きたいか?」
「わかりません。勿論、死にたいわけじゃないけど元々長生きするなんて思ってなかったし。――ただ桂さんと離れたくないだけです」
静かに桂さんは僕の話を聞いている。
「私もお前を死なせたくない」
「桂さん!」
彼から求められていると思うと、死への宣告など恐るるに足りない。それでもこうして抱き合い、繋がり、愛を交わすことが限られているのかと思うと僕は強い欲情を感じる。
「桂さん、桂さんで、いっぱいにしてください」
「望むとおりにしてやろう」
僕の願いをもはや彼は制することはないだろう。彼の蜜で身体中が甘くなる。
「ああ、僕も、ダフネみたいに――木になりたい」
耳元で甘く優しくそれでいてよく響く威厳のある声で桂さんは囁く。
――在天願作比翼鳥、在地願爲連理枝…… ( 天にあっては願わくは比翼の鳥となり、地にあっては願わくは連理の枝となりましょう)
延命治療は行わない。この家から死ぬまで離れたりしない。願わくはもう一度開花した金木犀が見られますように。
「先輩――こういうのは変ですけど、元気出してください」
「芳樹……」
癌だと言われても僕にはピンと来なかったし、逆に納得もできてしまう。――命には限りがある。
先輩が涙目で僕を両肩を持ち、時々嗚咽しながら『延命』やら『食事療法』『レーザー』などの言葉を投げかけてきたが頭に入ってこなかった。それよりも打ちのめされたような先輩の姿を見ることが悲しかった。
暗闇で静かに桂さんを待つ。
甘い香りが流れふわりと彼が隣りに座った。
「待ったのか」
「いえ」
しばらく彼の香りを嗅ぎ深呼吸しリラックスする。
「桂さん。僕――もう長くは生きられません。余命は数か月くらいって」
「もっと生きたいか?」
「わかりません。勿論、死にたいわけじゃないけど元々長生きするなんて思ってなかったし。――ただ桂さんと離れたくないだけです」
静かに桂さんは僕の話を聞いている。
「私もお前を死なせたくない」
「桂さん!」
彼から求められていると思うと、死への宣告など恐るるに足りない。それでもこうして抱き合い、繋がり、愛を交わすことが限られているのかと思うと僕は強い欲情を感じる。
「桂さん、桂さんで、いっぱいにしてください」
「望むとおりにしてやろう」
僕の願いをもはや彼は制することはないだろう。彼の蜜で身体中が甘くなる。
「ああ、僕も、ダフネみたいに――木になりたい」
耳元で甘く優しくそれでいてよく響く威厳のある声で桂さんは囁く。
――在天願作比翼鳥、在地願爲連理枝…… ( 天にあっては願わくは比翼の鳥となり、地にあっては願わくは連理の枝となりましょう)
延命治療は行わない。この家から死ぬまで離れたりしない。願わくはもう一度開花した金木犀が見られますように。