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降りしきる黄金の雫は
第16章 16 結実
梅雨が明け、クチナシの花の香りが感じられると、さすがに癌の進行により、痩せ始め肌の艶も消えた。
それでも痛みはなく生活に支障がないのは桂さんのおかげだろうか。
ただ会社は退職した。もうほかの社員たちの悲しそうな目を見るのが辛かったし、初めて会社で会う客たちの少し驚いた表情にもいたたまれないからだ。
身辺整理ををしながらその時を待つ。そうは言っても元々ものに執着がなかったせいで片付けるのもあっという間だった。
夜中にみぞおちに鈍い痛みを感じると桂さんが口に濃厚な甘い蜜を注ぎ、痛む部分をさすってくれる。
「まだ痛むか?」
「いえ、ほんの少しです」
痛みは辛いが桂さんが側にいてくれると緩和する。
「桂さん――抱いて」
「ああ……」
このまま桂さんに溶け込んでしまいたい。毎夜願っても朝には骨ばった身体が一つあるばかりだ。
それでも痛みはなく生活に支障がないのは桂さんのおかげだろうか。
ただ会社は退職した。もうほかの社員たちの悲しそうな目を見るのが辛かったし、初めて会社で会う客たちの少し驚いた表情にもいたたまれないからだ。
身辺整理ををしながらその時を待つ。そうは言っても元々ものに執着がなかったせいで片付けるのもあっという間だった。
夜中にみぞおちに鈍い痛みを感じると桂さんが口に濃厚な甘い蜜を注ぎ、痛む部分をさすってくれる。
「まだ痛むか?」
「いえ、ほんの少しです」
痛みは辛いが桂さんが側にいてくれると緩和する。
「桂さん――抱いて」
「ああ……」
このまま桂さんに溶け込んでしまいたい。毎夜願っても朝には骨ばった身体が一つあるばかりだ。