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降りしきる黄金の雫は
第17章 17 比翼
検査の結果、癌が完治していた。完治というよりもすっかり無くなってしまっていた。医者はもちろんのこと驚かないものは誰もいなかったが、僕は桂さんが全て持って行ってくれたのだと知っている。
半月もすると僕は以前よりも健康になっていて来月には仕事に復帰する。
庭の金木犀は手に持つとホロホロと崩れチリとなってしまった。しかしベッドに残された小さな花弁は残っていて僕はそれを全てかき集め瓶に収めた。中にはあの実を入れて。
庭先でなくなった金木犀の跡を眺めながら瓶の中の花の香りを嗅いでいると先輩がやってきた。
「芳樹、調子はどうだ?」
「いいですよ。すこぶる」
身体の調子は本当にいい。これが健康ということなのだと実感するくらいだ。それでも桂さんを失った悲しみと、残った実が僕を複雑な気分にさせている。
「ほんと不思議だな。その金木犀」
「ええ。どうしてこんな事になったのか全く分かりません」
「あとさ、お前にはいい人がいただろ。鉢合わせたことはなかったが。もう来ないのか」
「いい人――」
桂さんの姿が目に浮かび、涙があとからあとから湧いてくる。
「ああ、すまん。泣かすつもりじゃなかったんだ」
「いいんです――聞いてもらえますか?僕と彼の話を」
半月もすると僕は以前よりも健康になっていて来月には仕事に復帰する。
庭の金木犀は手に持つとホロホロと崩れチリとなってしまった。しかしベッドに残された小さな花弁は残っていて僕はそれを全てかき集め瓶に収めた。中にはあの実を入れて。
庭先でなくなった金木犀の跡を眺めながら瓶の中の花の香りを嗅いでいると先輩がやってきた。
「芳樹、調子はどうだ?」
「いいですよ。すこぶる」
身体の調子は本当にいい。これが健康ということなのだと実感するくらいだ。それでも桂さんを失った悲しみと、残った実が僕を複雑な気分にさせている。
「ほんと不思議だな。その金木犀」
「ええ。どうしてこんな事になったのか全く分かりません」
「あとさ、お前にはいい人がいただろ。鉢合わせたことはなかったが。もう来ないのか」
「いい人――」
桂さんの姿が目に浮かび、涙があとからあとから湧いてくる。
「ああ、すまん。泣かすつもりじゃなかったんだ」
「いいんです――聞いてもらえますか?僕と彼の話を」