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降りしきる黄金の雫は
第17章 17 比翼
僕は今、岡田先輩と飛行機に乗っている。中国の桂林市に向かうためだ。桂さんとの話を岡田先輩にすると驚いた表情をしたが作り話だとも嘘だとも思わないと言ってくれた。胸騒ぎと金木犀の香り、そして金木犀の花に抱かれているように横たわっている僕を目の当たりにしたからだそうだ。
更にもう一つ不思議なことがあった。
この夏に植木職人の林田さんのお父さんが老衰で亡くなった。大往生ということで親戚一同、悲しみを引きずることはなかったようだ。新盆の墓参りに行ったとき、墓に椎の実がやはり椎の葉っぱの上こんもりと乗せられ供えられてあった。林田さんは、まさかと思ったが一応持ち帰り仏壇に供えると、翌朝綺麗に無くなっていたということだ。
「林田さんのおやっさんも、お前も木の精に愛されたんだな。きっと」
桂さんの話をした後、先輩は「その実、どうするんだ?」と尋ねてきた。
どうしたらよいのかわからないと言うと、先輩は金木犀の故郷である、中国の桂林市に植えたらどうだろうかという提案をしてくれた。桂林市は2500年も前から金木犀を栽培しているらしく、50万本前後の金木犀が植えられている。開花の時期には目の前が黄金色に染まりそうだ。そこへ実を植えるのだ。
僕たちの実がひとりぼっちにならないように。仲間や番う(つがう)相手がいるところへと。
「先輩が中国語が得意だなんて知りませんでしたよ」
「あれ? 大学で専攻してたの知らなかったか?」
「うーん。ラグビーで目立ってましたし、中国語を披露してもらう機会がなかったですからねえ」
「よーし、まだまだ時間もあることだし、少し披露しといてやるか」
にっこり笑って先輩は何か小声でささやき始めた。
更にもう一つ不思議なことがあった。
この夏に植木職人の林田さんのお父さんが老衰で亡くなった。大往生ということで親戚一同、悲しみを引きずることはなかったようだ。新盆の墓参りに行ったとき、墓に椎の実がやはり椎の葉っぱの上こんもりと乗せられ供えられてあった。林田さんは、まさかと思ったが一応持ち帰り仏壇に供えると、翌朝綺麗に無くなっていたということだ。
「林田さんのおやっさんも、お前も木の精に愛されたんだな。きっと」
桂さんの話をした後、先輩は「その実、どうするんだ?」と尋ねてきた。
どうしたらよいのかわからないと言うと、先輩は金木犀の故郷である、中国の桂林市に植えたらどうだろうかという提案をしてくれた。桂林市は2500年も前から金木犀を栽培しているらしく、50万本前後の金木犀が植えられている。開花の時期には目の前が黄金色に染まりそうだ。そこへ実を植えるのだ。
僕たちの実がひとりぼっちにならないように。仲間や番う(つがう)相手がいるところへと。
「先輩が中国語が得意だなんて知りませんでしたよ」
「あれ? 大学で専攻してたの知らなかったか?」
「うーん。ラグビーで目立ってましたし、中国語を披露してもらう機会がなかったですからねえ」
「よーし、まだまだ時間もあることだし、少し披露しといてやるか」
にっこり笑って先輩は何か小声でささやき始めた。